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© 2016 Takaoka Hiroshi

  • 高岡洋詞

目指すは「ぼっちの星」!? マルチタスクガール、武井麻里子の現在地


 昨年4月にインタビューを載せた武井麻里子が2ndミニアルバム『マルチタスクガール』リリースを機に再登場してくれた。小柄な体のどこから湧いてくるのか不思議なほどのバイタリティを発揮し、あちこちのイベントに出演しつつ主催イベント「エレ日。」もスタート。作詞、作曲、歌唱、デザイン、イベント運営、グッズ作り、Tシャツのプリントまで、文字通りのマルチタスクでフル回転している。「ひとりでどこまでやれるか、自分との戦いにみんなを付き合わせてるみたい」と笑う彼女の現在をお伝えする。

●主催イベント「エレ日。」が拠点に

──お話しするのは1年ぶりですが、精力的に活動されていますね。

 相変わらず。「エレ日。」っていう自分の拠点になるイベントを立ち上げたのは大きいですね。

──どんなイベントか説明していただけますか?

 ブッキングから何から全部わたしがひとりでやるっていう主催イベントで、これまで3回やって、7月に4回目をやります。毎回十数組のゲストをお呼びして、午後1時ぐらいから始まって、2回目の物販が終わるのが夜10時くらい。1部と2部に分かれてるんですけど、再入場自由なので、お客さんには一日中過ごしてもらえるんです。

──武井さんはいっぱなし?

 ずっといます。ライヴも2回やるので死ぬほど疲れます(笑)。

──出演者はどんなふうに選んでいるんですか?

 広義のエレクトロニカがテーマなんですよ。このテーマで終日やってるイベントがあれば出たいんですけど他にないから、じゃあ自分でやってみようって。初めての独立した音楽活動だけじゃない社会参加っていうか、わたしもみんなも楽しめるみたいな場を作りたくて始めたんです。最初は超不安だったし超大変でしたけど、徐々に慣れてきました。やってみたら意外とできるもんだなって。

──出演者は女性アーティストばかり?

 メインは女性になってますけど、たまたまですね。ふだん共演するのが女性ばっかりで知り合いが多いっていう。わたしのお客さんは音楽に詳しい方が多いので、イベントと作品の質には絶対に手を抜けないんです。つまんないとか見たことあるブッキングだなって思われたらおしまいなので。

──2ndミニアルバム『マルチタスクガール』聴かせていただきましたが、ライヴを重ねて歌がとてもしっかりしてきた印象を受けました。シンガー武井麻里子の個性が確立されてきた感じ。

 そうだったらいいなぁ。練習はしますけど、すごく上手に歌おうとはあんまり思ってないんですよ。わたしが好きなのもすごくうまい歌じゃないから。それよりも感情がこもってたりとか人間性が感じられることのほうが大事かなって。

──今回もいろんな作家さんに曲を提供してもらっていますが、どんな基準で選んだんですか?

 ケースバイケースですね。あまり言葉にはしないんですけど、活動についての考え方や姿勢は確固としたものがあるので、そのイメージに合致するように、っていう感じです。「Feverish!!」を作ってくださった空中分解POCOさんは「STAR PLAYER」(前作収録)以来2曲目なんですけど、とにかく「STAR PLAYER」が大好きで、ファン人気も高いし、POCOさんって心配になるぐらい作品に対する熱量が高いんですよ。根っから芸術家なんですよね。だからすごくリスペクトしてて、また一緒にやりたいなって。「Overhaul」の蓮尾理之さん(siraph)はもともとファンだったんです。この活動の目標のひとつが、ファンだった人と一緒に仕事をすることなので。「LA LA LIFE」のYunomiさんは今のインディー界のトラックメーカーの顔みたいな方で、わたしの知ってるアーティストやアイドルの方にもたくさん関わってらっしゃるんです。その多くはいい意味でヴォーカルが無機質というか、生っぽい声を浮き上がらせないアプローチをとっているので、わたしはあえて生っぽい歌で、歌詞も重さのあるテーマにして、ギャップを出して差別化を図りました。

──なるほど。ひとと同じことはしないぞと。

 だから「エレ日。」もあんまり見たことのあるブッキングにはしたくないんですよ。「ほうかご☆マジシャン」は初めてのタイアップ的な楽曲なんです。『太鼓の達人』のアーケード版収録曲。前のバンドでタイアップしていて、ソロを始めたときに自分で売り込んだら、「マモルくん(nhhmbase)って男の子がいるんだけど一緒にやってみたら?」って紹介してくださったんです。バンダイナムコエンターテインメントさんはわたしがソロを初めてすぐの知名度が全然なかったときに抜擢してくださったし、ツイッターで拡散していただいたりもして、うれしかったですね。

──人情のありがたみが身にしみるのでは?

 ほんとそうですね。ひとりだから「くそーっ」ていうつらい思いもする分、助けてくれる人はなんでこんなに優しいんだろうって驚きます。自分で何か作ってる人はみんな優しい気がしますね。苦労を知ってるからなのかな。YunomiさんもPOCOさんも、すっごい丁寧に取り組んでくれて、本当に素晴らしい楽曲をくださったと思います。作ることに誠実なんですよね。


──ミキシングを佐々木喫茶さん(レコライド)にお願いしたのは?

 わたしKOTOちゃんと共演が多いんですけど、喫茶さんは彼女の曲をたくさん書いてるので、よくお会いするんですよ。楽曲もミックスもいいなと思ってて、お願いしてみたら実際すごくよくて。エレクトロっぽいミックスに慣れてらっしゃるから、なんの要望も出さなくても満足のいく出来にしてくれました。

工房に赴き、自らTシャツをプリント。人が労働する姿は尊い

●常軌を逸した負けん気がないと難しいかも

──主催イベントはけっこうなペースでやっていますよね。

 3か月に2回ぐらいは何かしらやってますね。自分の主催イベントがあるメリットは、例えば誰かを「エレ日。」に誘ったらその子が自分の主催イベントに呼んでくれたりとか、いい流れができることなんです。だからこそ、また出たいって思ってもらえるように、絶対にクォリティは下げられない。マイルールは「毎回ひとつ発明を入れる」。この界隈のイベントではあまり見かけないアーティストの出演や意外性のある組み合わせを、できるだけ毎回1組は実現させたいんです。驚きと、面白い違和感を意識しています。

──「エレ日。」は活動の拠点という感じ?

 運営としてはそうかもしれないですね。ただ、「エレ日。」に重心を置きすぎるとイベンターみたいになっちゃうから、今はリリースを先に考えるようにしてます。演者でいたいという気持ちももちろんあるので。難しいけど、絶妙のバランスで続けていきたいです。

──「楽しい」っていう域を微妙に超えてしまいそうなことはありませんか?

 つらいことは常にありますけど、楽しくないときは意外とないですね。運営は性に合ってると思いますし、歌うのも楽しいし、ライヴも大好きだし。ヒヤヒヤするときもありますけど、追い詰められてる感じも楽しい(笑)。本当に好きなんでしょうね。

──武井さんはバンドメンバーとしての活動が長かったから、ソロって実は最近なんですよね。

 でもこの2年間が濃厚すぎて、バンドのほうが長かったって感覚がもはやないかも(笑)。それまでももちろん真剣にやってはいたけど、やっぱりソロは仲間に頼れないという点で、1回のライブに懸ける覚悟も切実になったし、得られる経験値も上がったし。結局「すべて自分次第」っていうのが好きなんですよね。自分がダメならダメで、自分ができればできるっていうシンプルさが。

──ひとりでステージに立っている時点で尊敬します。自分も何度か立ったことありますけど、お客さんの表情が気になるし、不安になるんですよね。あれに耐えているだけですごい。

 常軌を逸した負けん気がないと、難しいかもしれないですね。わたしはつまんなそうにしてる人がいると、あえて目を合わせにいったり、絡みにいってしまったりしますから(笑)。その結果、根負け(?)して笑ってくれたり、ノッてくれるとすごくうれしいですね。

──さすがはド根性ガールです。

 もともとは豆腐メンタルなんですよ。ソロを始めたばっかりのころは「死にたい」とか普通に思ってましたから。でも経験を積んでくると「あ、これ前にもあったな」って対処方法がわかるんです。これはだいたい3日くらいで元気になるやつだ、みたいな(笑)。じゃあ次は1日半で元気になるのを目指そう、って。

──精神状態がよさそうですね。

 なんか大人になってきちゃって(笑)。いろんなことが「まぁいいか」みたいな。少しずつ気楽に楽しめるようになってきましたね。趣味じゃなくて仕事だから、妥協しなきゃならないときはありますし。絶対に妥協しないのは楽曲のクォリティと「エレ日。」のブッキングくらい。他はそんなに……ちょっとどうかなって思うようなことでも、興味があったらやってみます。意外なところでいい出会いがあったりもするじゃないですか。

ミニアルバム『マルチタスクガール』ダイジェスト

●十代の自分に報いるために頑張り続ける

──『マルチタスクガール』というタイトルは? 訊くまでもなくジャケットが語っていますけど。

 音楽的なことから裏方的なことまで、活動の集大成みたいな感覚です。やっぱりわかりやすく言わなきゃいけないんだなって思いました。100回言わないと気づいてくれない人もいるから、これもあれも自分でやった、ってしつこく言ってます(笑)。

──自分でやることとひとにお願いすることはどう線引きしていますか?

 今の時代、個人でもだいたいのことはできるといえばできるんですけど、手作り感があってもいいこととクォリティが高くなきゃいけないことがあると思ってて、タワレコで流通するCDの楽曲やジャケットは手作り感があっちゃダメなんですよ。だからそこはプロにお願いします。でもフライヤーは自分で作って、空回りしてもやる気を伝えたい(笑)。『マルチタスクガール』の収録曲でプロに頼んでいない要素としては、「n.e.o.n」は自分で作曲してます。

──ですよね。どういうふうに作ったんですか?

 十代のときに鼻歌で作って「いい曲じゃん!」って思ってずっと温めてた曲なんですよ。そういう曲が実はいっぱいあって、そこから10曲ぐらいヤマモトショウさんに送って選んでいただきました。助手(ファン)の方に意外とほめられるんですよ。ショウさんのおかげですけど(笑)。今後も徐々に自分の曲を出していこうかなと思ってます。ひとのふんどしで相撲とってるばっかりじゃないぞ、ってとこを見せないと(笑)。

──自分が鼻歌で作った曲がきれいにアレンジされたのを聴いて、ご感想は?

 報われた気分です。十代の自分を助けてあげたような。

──ときどき思いますけど、武井さんの十代ってどんだけ暗黒だったんですか(笑)。

 ほんと暗黒ですよ。十代の自分に報いてあげるために頑張り続けてるんです。無駄じゃなかったよって。まぁ今は、ひとりで何かをやるような人が十代のとき学校とかでハッピーに過ごせるはずがないよな、って思いますけど(笑)。そもそも集団が苦手だし、なんでそうしなきゃいけないのかわからないことばっかりで。やり方が決まってることが多いじゃないですか。別にそのやり方じゃなくてもできるのに、意味がわかんなくて。そう思うと今はハッピーですね。あんなに集団行動が嫌いだったわたしが「エレ日。」というみんなが参加してくれる場を自分で作れるようになったんだと思うと、成長したなって思います(笑)。ちゃんとひとと関わって、少しでも役に立たないと。好きなように活動してるだけじゃダメだなって思います。

──ソロになって2年、レパートリーも増えて、アーティストとしての色が徐々にできてきた感もありますが、ご自分としてはいかがですか?

 やっぱり「エレ日。」を始めてから見えてきたものがありますね。あんまり細かく言語化はしないんですけど、今回はマルチタスクガールって宣言したので、これからもマルチタスクで行きたいなとは思ってます。ひとりでどこまでやれるか、自分との戦いにみんなを付き合わせてるみたいな(笑)。わたしは流しのミュージシャンだと思ってるんです。どこかに所属するつもりもないし、何者かになりたいわけでもないし。

──将来こうなりたいみたいなイメージってありますか?

 あんまり将来のことって考えたことがないんですけど、うーん……どうなりたいかなぁ……。続けていきたいですね。続けていくために、そのときできることを全力でやりたいし、「エレ日。」もみんなが出たいと思ってくれるような、ちょっと名が知れてるイベントに育てたいです。あとアニメとかゲームの音楽をやりたいっていうのは夢としてあります。でも最大の目標は、自由なままでどこまで成功できるかを追求したい、っていうことかな。わたしみたいな人は世の中に絶対にいると思うんです。まわりとうまくやれなくて、大人の言うことを聞けなくて。そういう人に、ひとりならやっていけるだけのちょっとした成功例があるってことをいつかは見せたい。「ぼっちの星」みたいな(笑)。

(2017年4月17日)

[PROFILE]

たけい・まりこ……2015年6月にデビューし、ウェブサイト、CDジャケット、グッズなどのデザインから、作詞はもちろん一部の作曲も自ら手がけるシンガーソングライター。さまざまなアーティストとのコラボレーションを「五感☆採集」と銘打ってシングルとして販売、昨年3月の『NEW』に続いて今年5月には2ndミニアルバム『マルチタスクガール』をタワーレコード一部店舗で流通スタート。昨年11月にキックオフした主催イベント「エレ日。」は3回を数え、7月には4回目を開催予定。(写真は『マルチタスクガール』ライヴ会場限定盤のジャケット) http://marikoprogressive.wix.com/takeimarik




[RELEASE]

武井麻里子 / マルチタスクガール

2017/05/17発売 / /// records(ドキドキレコーズ) 収録曲:[1] n.e.o.n [2] LA LA LIFE [3] Feverish!! [4] ほうかご☆マジシャン [5] Overhaul タワーレコードの一部店舗(渋谷、新宿、池袋、秋葉原)で流通をかけるミニアルバム第2弾。シングル『五感☆採集』vol. 3 & 4に収録されていた [1](作曲は武井、アレンジは元ふぇのたすのヤマモトショウ)と[5](siraphの蓮尾理之が作曲)に、Yunomiによる [2]、唯一前作から連投となる空中分解の [3]、マモル(nhhmbase)が作曲したゲーム「太鼓の達人」アーケード版収録曲 [4] を加えた全5曲。クォリティにこだわったエレクトロなサウンドに乗って、前作より気持ち甘めの武井の歌声がポップに弾んでいる。理屈っぽさとガーリーさが同居した歌詞も彼女ならでは。

[UPCOMING EVENTS]

インストアライブ(特典会あり) 日時:6月11日(日)開演:18:00 会場:タワーレコード渋谷店4F 観覧・入場フリー

日時:6月18日(日)開演:14:00 会場:タワーレコード池袋店6F 観覧・入場フリー

武井麻里子presents『エレ日。vol. 4』 日時:7月22日(土) 会場:下北沢MOSAiC 詳細は近日発表予定

武井麻里子2ndワンマンライブ

日時:10月4日(水)開場19:00 / 開演19:30(予定) 会場:渋谷eggman ソロ、フルバンド形態あり/VJあり 料金:前売¥3,000 / 当日¥3,500(1D別)

※メール予約:marikoprogressive@outlook.jp

※詳細は武井麻里子OFFICIAL WEBをチェック!



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