
interview pick up
何百本もあるインタヴュー記事の中から、特に好評だったもの、たくさん読んでもらえたもの、僕自身が思い出深いものを22本ピックアップ。絞るのが大変でしたし、ベスト22ということでは決してありませんが、これを読めば僕の仕事の特徴はおわかりいただけるのではないかと思います。なおタイトルは掲載先でつけてくれたものです。
これが初対面。当時はタイトルにもあるように「ひがみソングの女王」として注目を集めていましたが、僕は彼女がもっとオーセンティックな真・善・美を歌っていることを知っていました。しかしそちらを打ち出しすぎず、パブリックイメージに適度に合わせつつチラチラ覗かせていこうと臨んだ記憶があります。以来、何度もご一緒しましたが、本当に聡明で話していて楽しい人です。
『TOKYO』はベッド・インが普遍性を手にしはじめた記念碑的なアルバム。このころからファン層も明らかに広がっていきました。ただの面白お姐さんではないことは最初にライヴを見たときからわかっていましたが、いくつかのメディアがしていたようにシリアスに全振りすると、いろいろ背負わせることになってしまいかねない。面白とまじめのバランスにとても注意しながら毎回のインタヴューに臨んだものです。
『フェルマータ』には前作で見せていなかった部分がチラチラ顔を覗かせている感触があり、その部分を引き出すことでアーティストとして成長してくれたら、との願いを込めて、思い切ってつっこんでみました(本人からのご指名でしたし)。誰にでもいつでも通用する手法ではないけれど、このときの彼女はむしろそれを求めていたようです。とてもいきいきと楽しそうに自己開示してくれました。
前年のインタヴュー(初対面)でたまたま出た音楽批評をめぐる雑談をそのまま載せました。さほど読まれた手応えはなかったのですが、別媒体でインタヴュアーがその流れに乗っかっていたので、地味〜に影響があったのかもしれません。この第2弾はその記事も含めてひと通り出切ったあとでの取材で、読む人が「この話もう読んだ」と思わないような新味のある内容にしないと……と腐心したのを覚えていますが、竜人さんはきっちり応えてくれました。常にいろんなことを考えていて、相手の出方を見ながらそれを伝えられる、頭のいい人です。
デビュー時から6〜7回インタヴューしていますが、個人的にいちばんよく読み返すのがこれです。彼女が何に怒っているのか、あの巨大なエネルギーの源がどこにあるのか、とてもよくわかります。いまも引き合いに出す人が多い吉田健一の有名なテーゼ「戦争に反対する唯一の手段は……」の扱われ方への懐疑は見事で、僕も大いに共感しました。
『女子高生ゴリコ』で漫画家デビューしたころに編集仕事でコラムをお願いしたことがあるしまおさん。そのときは電話とメールだけだったので初対面でしたが、かっこつけず取り繕いもせず、いたって率直な口調が印象に残っています。「感想は意識的に書かないように努めている」「SNSで意見表明なんかしたくない」という話は腑に落ちました。
アルバムを一聴して、やりたいことも、好きで大切にしていることも、手に取るようにわかった(ような気になった)のを覚えています。「きれいごとだと思うし、ダサいと言われるかもしれませんけど、こういうふうに誰かが歌わないと、信じる思いみたいなものって消えちゃうよなと思って。私は胸を張ってストレートに平和と愛を歌っていこうと」という発言には胸が震えました。
よく読まれたということで言えば、たぶん僕の執筆記事の最高記録だと思います。なにしろTwitter(現X)のトレンドトップですから。「卓球さんがまじめな話を!」と驚く人が多かったけれど、僕が何度かインタヴューした範囲では、彼はいつもまじめで真っ当です。お母さんとワンちゃんの話はたまたま僕が自分の親と猫の話をしたことで出てきたもので、インタヴューは毎回が一期一会だなと実感します。
現代のオピニオンリーダーと目されているのも納得のいく思索の深さと言語化のうまさ。「究極的にはひとり 、個人に立ち返るっていうことが大事なんじゃないか」という投げかけにも共感しました。『ユリイカ』臨時増刊号での折坂悠太との対談構成は、この記事を読んでくれた編集者からの依頼でした。
ずっと「あ〜よかった (pal*system mix)」の話だけと思い込んでいたのですが、当日の朝に「アルバムが出るのでその話もしてください」と資料が送られてきました。聴けたのは一回きりでしたが、第一印象をこわごわ投げかけたらことごとくクリーンヒット。リモートにもかかわらず大いに盛り上がり、その後お互いのポッドキャストやイヴェントに出演し合うなどの親交もできたという、幸運な仕事でした。
アルバムのプロモーション期間が終わってから「まだ話していない大事なことがあるので、高岡さんに聞いてほしい」とご指名をいただいたときは、責任の重さに武者震いがしました。息が詰まりそうな空気が流れるレコード会社の会議室で、言葉を選びながら訥々と、しかし正直に話してくれました。聞くだけでぐったり疲れたので、本人の精神的負担は計り知れませんが、それに足る特別な内容になったと思います。
彼らのインタヴューはたぶんほとんどラップ専門のライターがしていて、畑違いは僕ぐらいだったはずです。二人のたたずまいはどこまでも儚くて美しく、話す言葉にも深い手応えがありました。この後にお邪魔したライヴのすばらしさも込みで印象深く、傑作『Mars Ice House』はいまも愛聴しています。