top of page
執筆者の写真高岡洋詞

インストバンド、MOP of HEADはなぜ結成10年目で「歌もの」を作ったのか

 MOP of HEADが7月にリリースしたミニアルバム『and Touch You』は10年のキャリアで初めて全曲ゲストヴォーカリストを迎えた、いわゆる「歌もの」作品集。ずっとインストゥルメンタルバンドとして活動してきた彼らにとっては思い切ったチャレンジであり、意欲はタイトルにも明らかだ。UCARY & THE VALENTINELarge House Satisfactionの小林要司、KIMONOSMETAFIVEで活躍するLEO今井、金沢のオルタナティヴヒップホップデュオYOCO ORGANSUPER BEAVERの渋谷龍太と、個性的なシンガーたちとのコラボを通して、MOP of HEADは何を学んだのか。この経験は今後の彼らにどう影響するのか。10月23日にはリリースイベント第2弾「Touch You vol. 2」を控える彼らのインタビューをお届けする(ドラムのSatoshiは欠席)。


MOP of HEAD

●歌も楽器のひとつとして捉える

──そもそもどうして歌もののアルバムを作ろうと思ったんですか?

George 単純に結成10年目で、新しいことにはインストの枠内でも常に挑戦してきたんですけど、去年出したアルバム(『Vitalize』)で「これ以上インストを続けることで新しいことって何があるんだろう」っていうところにぶち当たったんで、ここらでガラッと変えてみる必要があるかなって。あと望まれてたっていうのも実際あるんですよ。「歌入れたらどうなるだろう」って前から言われてたし。(ゲストを入れず)自分たちだけでもやってたかもしれないです、このタイミングで。

──前作にもHitomiさんが歌った曲(「Sky」)が入ってましたもんね。

George それがよりわかりやすくなったっていうか。歌う人に入ってもらって。

──先日のライヴ(8月7日、渋谷チェルシーホテル「Touch You」)にはお邪魔できなかったんですけど、「Do It」にフィーチャーされているUCARY & THE VALENTINEさんが出演したそうですね。そういう曲は4人だけでは再現できないわけですけど、どう解決していくんですか? 例えば自分たちで歌ってみるとか?

George それもひとつの方法ではありますけど、単純に僕ら、インストも歌ものもトラックとしてしか考えてないんで、そこに人がいるかいないかっていうことはそんなに気にしてないんですよ。むしろフル尺演奏しなくていいくらいに考えてるっていうか。例えばこの前は「Breaking Out Basis」のときにYOCO ORGANに歌ってもらったラップを演奏とマッシュアップしたんですけど、要は人の声もパラデータの素材として使ってるんで、そのままつるっと演奏しちゃうとカラオケみたいになっちゃいますけど、演奏の部分でアイデアを出して、CDとは違うように聴かせられたらいいなって。歌も楽器のひとつとして走ってるっていう感覚で。

──歌のデータを再生しつつの演奏、みたいなこともあり得る?

George 歌い手さんはトラックのポン出しで歌うじゃないですか。その逆で、歌がポン出しで出てきて、演奏はその日によってアレンジで変わるとか。そういうイメージに近いかもしれないです。

──当然ながら聴いた印象がこれまでの音源と全然違いますが、作り方も違いましたか?

George とにかく時間がかかりました。こだわるとここだわり始めたりとか……つっても基本的にはトラックから作り始めたんですけど。コードだったりメロディだったり。ただ歌を乗せてみてどうなるかってところが、うちにはヴォーカリストがいないんで。

Kikuchi そこがなー。ひとに振る前までが大変でしたね。

George 「このメロディ、ヴォーカリストは歌えんのかな?」っていうレベルの話でした(笑)。

Kikuchi 「これで大丈夫なのか?」みたいな。

George ここ(George宅)にみんな集まって、僕がちょっと弾いて「この感じで歌ってみて」って言ってキクチが歌ってマイクにメロディを吹き込んで、そのあとまたオーディオを切り刻んで「こっちのメロディのほうがいいな」とか。それがいちばん大変でした。楽器でメロディ弾くのとはわけが違うから。

──実際に歌ってもらってそんなに問題はなかった?

George レコーディングはすごくスムーズでした。LEO今井さんとかは曲を送って雰囲気を伝えたら、返ってきたらAメロ勝手に変わってるみたいな(笑)。そういうのはやっぱ素晴らしいなって思いました。曲を理解してくれるのが早かった。今回歌ってくれた人みんなそうかもしれないですね。

──ソロでやってる人じゃなくてバンドのヴォーカリストが多いのは意図したもの?

Kikuchi 友達っていうのもありますし……ピンの人で頼める人がいなかった(笑)。

George バンドマンというかライヴやってる人のほうがやっぱ面白いなって思うんです。CDだけ出してる人より、ステージに立ってる人のほうが理解が早い。そういうのもあってバンドマンに頼んだ感じです。そういう人が他のバンドに入ることってないと思うし、向こうとしても貴重な経験だったんじゃないかって。渋谷(龍太)とか(小林)要司は、たぶんヴォーカリストとして初めて呼ばれたんじゃないかな。僕らとしてもありがたいことなんですけど、「ちょっとおたくのヴォーカル借りていい?」みたいな。そういう意味ではちょっと特殊なバンドですよね。どのバンドにもヴォーカル貸してって言える(笑)。

──先方としては「外仕事、頑張らなきゃ!」みたいな意識もあったんですかね。

George あと評価してもらってうれしいみたいなのもあったかも。

──YouTubeのアルバム解説動画を見ると、キクチさんとサトシさんがひたすら「みんなすげえ歌うまい」って言ってますよね。

George あれ解説できてないよね(笑)。

Kikuchi 渋谷なんて40分ぐらいでレコーディング終わっちゃったんですよ。「こんなに早く終わるもんなんだ」みたいな。やったことなかったんで、そういう意味で衝撃度が高かったですね。

──歌ものバンドの歌入れってどれぐらいかかるものなんでしょうか。

George 僕はサポートもやってますけど、人によりますね。長い人は歌だけで一日潰しちゃう。結局フレッシュな状態の声じゃないと録れないとかで、歌ってない時間も長いんですよね。休んで、録って、エディットして……一日頑張って(喉が)2、3曲もつかどうかじゃないかな。ピアノなんて昼入りで録り始めるの夜10時とかで、最終的にスタジオの時間なくなっちゃって「これ家で弾いてきてもらっていいですか?」みたいな(笑)。やっぱりヴォーカルって現場の最優先事項になっちゃうんですよ。あとヴォーカリストってこだわりがすげえ強い人が多いんで、そういう人は時間かかりますね。

──そういう経験はMOP of HEADにはないから……。

George どれくらいかかるかなって思ってましたけど、みんな予想よりずっと早かったです。

──演奏面で今回いちばん違ったのってどういうところですか?

George 今回の曲は難しかったです。よさでもあったと思うんだけど、僕たちのインストの曲って大味だったんですよね。細かくないっていうか、伝えたいことがバンッとあって、それを大きく演奏するっていうのが醍醐味っていう、日本人っぽくない音楽みたいな。今回は歌が入ることによって、一歩引いて音楽をやるってことになったんで、それを全員のバランスで考えると、ヴォーカルは常に前に出てて、このときはギターだな、このときはベースだなってバランスが難しかったです。弾かないところってのも当然出てくるんで、アンサンブルとして考えると、休むとこ休んで出るとこ出て、あとフレージングも歌を邪魔しないようにって。ギターなんかあんまり弾いてないように見えて、実はやることは多いみたいな。

Kikuchi 実際、作ってるときは、歌があってどういい作品にするかってところを最優先事項にしてたんで、実際にスタジオに入って合わせてみると「なんかすげえ難しいぞ」とか(笑)。

George あと自分の曲を覚えてないんですよね。コードとかフレーズを。僕は全部自分の家で仕上がっちゃうんで、打ち込んだり弾いたりして「できたー!」って持って行って、レコーディングして、じゃあライヴでやろうってなると、けっこう時間空いてるんで「これコードなんだっけ?」みたいな(笑)。

Kikuchi コードなんだっけ問題がいちばん多かったですね。曲を作ってゲストヴォーカルに投げたら「ちょっとキー変えたい」みたいなこともあるじゃないですか。それで上げたり下げたりしてるうちに、わからなくなっちゃうみたいな。

Hitomi 聴きながらやってました、みんな。

George 自分で作った曲なのに、他のパートの人に教えてもらって(笑)。

Kikuchi 「そうじゃない」とか言ってね。

──ベースなんかインストと歌ものとではけっこう違うんじゃないですか?

Hitomi 気持ち的にはあんまり変わらないんですけど、Georgeも言ってた通り邪魔しないようにっていうのはやっぱり考えちゃいますよね。この前のリリパでも、UCARYちゃんが聞こえないから下げてくれみたいなことがあったり。


MOP of HEAD

8月7日、渋谷チェルシーホテルで

●トラックがかっこよければ大丈夫

──MOP of HEADは従来、インストバンドっていう看板を掲げてやってきたわけですよね。そこには理由があるはずで、アンチ歌ものみたいな感覚があったんじゃないかと想像するんですけど、あえて歌ものに行くのはやっぱり勇気が要ったのでは?

George 歌がある音楽はもともと好きなんでダサいとは思わないですけど、シーンというか、あんまりかっこいいヴォーカリストがいないなって思って。メジャーフィールドでやってるようなバンドとか見ると、やたら泣かせたがるじゃないですか。

──スタイルじゃなくて表現方法の問題か。

George テレビの音楽番組とか見てると、けっこうライヴやってんのに毎回そんなこと言ってんの?とか思って恥ずかしくなっちゃうんですよね。もっと「やりたいからやってんだけど」みたいな人が出てきてもいいって思ってるんで、僕たちは別にアツいことも何も言わないけどぶつけますよ、音楽を聴かせたいんで……っていうスタンスで。

Kikuchi 泣いてもらっても困るんですよ(笑)。

George 例えばSUPER BEAVERとかLarge House SatisfactionなんかはいわゆるJ-ROCKシーンのバンドじゃないですか。インストでこれまでやってきた僕たちにとっては、それをやることがいちばん挑戦だなと思って。SUPER BEAVERのお客さんで、渋谷が入ってるからアルバムを聴いてくれる人もいると思うんですよ。その人たちは僕らの過去の作品は絶対に聴かないと思うけど(笑)、今後何かやったときに「あんときあれやってた人たちだ」ってことになるとは思ったんですよね。例えばこの後インスト出したとして、「この前渋谷とやってたバンド、普段は歌ないんだ」って、そこからまた始まってくれれば。そういう意味ではほんと単純にバンドを広めるための作品なんです。この後、歌ものでやっていくってことでは全然ない。むしろ、インストで活動していく上で肩身の狭い部分もあったんですよ。考えて考えてポップにしても、歌が入ってるものには絶対に勝てないっていうところに悩み続けて、やっと決着がついたみたいな。「入れよう!」って(笑)。その分、いいものを作らないといちばんダサく映るパターンになるなとは思いました。けっこう好き勝手言ってきたんで、歌入れてダセえもん作っちゃったらこれまでの10年ないな、みたいな。ある程度ハッパはかけてました。

──ダサいものにはしないためのポイントは?

Kikuchi まずトラックがかっこいいってことですね。歌が入る前にトラックがかっこよければ、絶対に変なことにはならないって。

George インストと歌ものでは成立のし方がけっこう真逆なんで、歌ものはちょっと余裕を持たせたぐらいで完成にしといたほうがいいんですよね。インストって100%詰め込んでやっと完成なんで。歌が入って変わる部分が大いにあるんで、そこを計算というか、隙間を作っておいて「これ、歌が入ったらちょうどいいバランスになるんじゃないか」みたいな。空想でしかないんですけど、その作業がけっこう大変だったと思います。インストって家で完成しちゃうもんね。

Kikuchi うん。

George 素材があればトラックとして完成って決めつけられるんですけど、歌ものって歌が入ってからのアレンジになるんで。僕たちはトラック重視というかトラックから作っていくバンドなんで、そこにやっぱり時間がかかりました。あと今回で言ったら四つ打ちですかね。あえての四つ打ち。僕、日本の四つ打ち文化が嫌いで、「あんなもん四つ打ちでもなんでもねーよ」とか言ってたんですけど(笑)、そこに対する正解みたいのはひとつ出したかったんですよ、あの渋谷の曲(「Wonder Boy」)で。BPMが120ぐらいで、途中ハウスっぽいピアノを入れて、みたいな。わかる人はわかってくれるし、あれも一応四つ打ちなんだってことを出したかった。速いだけじゃない四つ打ちもあるっていうか、そっちがむしろ本来の姿だと思ってるんで。

──考えてみりゃハウスだってファンクだって歌が入ってなんぼですもんね。

George それを自分たちの手で実行してみたかった。UCARYちゃんの曲も、ジャンルでいえばツーステップとか、そういうビートが軸になってるので、知ってる人と知らない人で反応が全然違うんです。それは狙い通りだったなって思います。どっちにも行けるようなものにしたかったんですよ。歌の存在がいい緩衝材になってると思います。

──少し前にROLLYさんにインタビューしたんですが、70年代のロックの名曲カヴァーアルバムを作ったとき、最初に歌を録ったんですって。70年代の音はとにかく歌が中心にあるからって。「今のJ-POPは空白を恐れてオケをガチガチに作り込んでから歌を乗せるから詰め込み過ぎになるんですよ」と言ってました。

George 俺もそういう発言どっかで読んだな。細野晴臣さんだったかな。年をとればとるほど、もう歌中心でいいんだよねって。僕はもともと歌がバンっと出てるものって好きじゃなかったんですけど、けっこう核心突いてるなって思って。メロディがよくて、バックが適切に支えてれば、音楽ってそれでいいんじゃないかって思うんです。今は打ち込みとかオケのライヴが当たり前になってるじゃないですか。僕らより下の世代の子って、ギターの歪んだ音がスピーカーから鳴ってるのを何とも思わないだろうと思うんですよ。僕はすっごく違和感あって、やっぱりアンプから出ててほしいんですけど、その感覚はここ10年くらいで変わったかなって思います。僕とかもっと上の世代の人は「ギターぐらい生でやればいいのに」って思うけど、今の若い子はそれすらよくね? っていうかギターでなくてもよくね? みたいな。聴き方が変わったし、ステージの使い方も変わってきましたよね。生演奏ってそもそも重要視されてんのかな、って思うときもあります。

──ヒップホップもDJがトラック再生してラップするわけですしね。

George それを思うと、ROLLYさんの逆算でやっていく方法とかにまた戻っていくのかなって。生音が新しい、みたいになっていくのかもしれないですね。

Kikuchi それはいつか起こるだろうなって思いますよ。

George バンドやってるだけで「大変だね」って言われる時代が来るみたいな(笑)。DJが「CDJがあるのに、なんでアナログでやってるの?」って言われてる流れが、そのうちバンドにも来るんじゃないかと。「カウントとかさ、面倒くさくない?」。

Kikuchi 「こっちは再生ボタン一個だからね」みたいな。

──そう考えると、歌をシークェンサーで再生して生演奏と組み合わせるみたいなことも、逆に言うとアリになってくるわけですね。

George 歌った人の訛りってあるじゃないですか。それに対して演奏を変えていくんで、実は内部はかなりしびれる状況になってるんですけど(笑)。カラオケっていう文化があるんだから、演奏だけ生っていうのもあっていいと思います。


MOP of HEAD

8月7日、渋谷チェルシーホテルで

●新リーダーのもと結束を固める

──僕が初めてライヴを見た3年前は、Georgeさんもずっと俯いて演奏してたし、ひとことも喋らなくて、それはそれでストイックな魅力があったと思うんですが、この事務所に移籍したころから、社長さんの示唆もあって、だんだんとオープンになってきてますよね。MCでSatoshiさんをいじったりとか。

George ふだんの4人の会話をそのまま出すようになったんですよ。あんまり決め込んであえてオープンにするみたいなことは、そこまで意識してないです。ちょっと近寄るぐらいの感じで。あんまり普段のまんま行っちゃうと、ほんとダラダラしちゃうんで(笑)。

──お客さんとのコミュニケーションという局面では、Kikuchiさんの実直なMCはもちろんだけど、Satoshiさんがけっこうキーパーソンというか、コミックリリーフ的な役割を負っていますよね。

George おいしいですよね。俺もあの役やりたいです(笑)。

Kikuchi なんならいるだけでもいいぐらいだからね。

George あいつはどこにいてもあのポジションを守り抜くんですよ。誰か喋んなきゃいけない状況になっても、Satoshiは微笑んでるだけでいいみたいな。

Hitomi うらやましい。

Kikuchi 持って生まれた才能だよね。

George サポートでも現場一緒になるけど、あの地位を築くスピードの速さにびっくりしますよ。常に2.5列目ぐらいのところなんですよ。うっかりミスしてもSatoshiならいいみたいな。本人も気にしない感じでやるし、終わった後も決して責められないし。

Kikuchi どうやってるんだろうね。

George 狙ってないんだよ。で、たまに話すと、ああいう人だから、優しいと勘違いされるんですよ。あいつ女の子のファン多いし。

Kikuchi ダントツだよね。

Hitomi なんかちょっと不思議ちゃんみたいな。

──不思議な人ってつい見ちゃいますからね(笑)。そういうところも含めて4人のキャラがだんだん立ってきてる気がします。Georgeさんもちっちゃくてかわいいし。

George 俺、最近気づいたんですよ。自分がちっちゃいって。

Hitomi えっ、最近!?

George 日本人の平均身長って171とかですよね。僕166なんですけど、自分では普通だと思ってたんですよ。おっきくはないけどちっちゃくもない。そう言ったら昨日「おまえはチビだよ!」って言われて、俺って小さいんだって昨日気づいて、けっこう凹んでたんです。いろんな人のこと「ちっちゃい」とか言ってたのに(笑)。

Kikuchi ステージを降りてフロアとか歩いてるとびっくりされてると思う。

George 降りないようにしよう。

──そして横にでっかいKikuchiさんがいると。実際以上に大柄に見えちゃいますね。

Kikuchi 横がチンチクリンなんで。

Hitomi Satoshiがいちばんでかいんですよ、身長は。

──洋服を買いに行くとわかりません? 「Sサイズばっかだな」って。

George 細いんだって思ってました。

──細いのは知ってたけど丈が短いのは知らなかった?

George 確かにズボン買いに行くとやたら切らなきゃダメだなって思ってました。「思ったよりちっちゃいんだね」とかはよく言われてましたけど、「思ったよりってことは、もっとすげえでかいって思われてたのかな」ってプラス思考してました。175ぐらいあると思われてたのかなって。

Kikuchi その思考おかしいよ。

──Hitomiさんはバンドの中で「女の子の役」みたいな色合いになってくるじゃないですか。

Hitomi そうですね。紅一点っていう。衣装は女性らしいものを着ようと意識してます。それは前々から。

──僕がHitomiさんを見てて思うのは、ヒール履いてると動きにくくないかな? って。

Hitomi 足元はけっこう気をつけてます。シールドを踏むと抜けちゃうんで。

──Kikuchiさんはリーダーになられたそうで。

Kikuchi そうなんです。Georgeがクビになって(笑)。

──なぜクビに?

Kikuchi 寝坊です。

George 諸説あるんですけど……寝坊です(笑)。

──交替したのはいつ?

George 去年の11月か12月くらい。

知久さん(事務所の社長) 地方に行くときでした。こいつ、俺が朝の4時にクルマ借りて荷物積んで待ってたのに、来ないんですよ。電話鳴らしてもダメで「おまえら行ってなんとかしてこい!」って言って。来た瞬間にケツ蹴っ飛ばして「おまえクビ!」って。Kikuchiがリーダーになってすごくよくなりましたよ。

Kikuchi よかった。

知久 リーダーの仕事って意外といろいろあるじゃないですか。連絡関係とか。

竹淵さん(マネージャー) 時間にいちばん厳しいのがKikuchiさんなんで。

Kikuchi 遅刻でクビになったやつを見てるからね(笑)。

知久 でもGeorgeは「Do It」のPVの撮影にも遅刻しやがりましたから。

George Kikuchiブチ切れでした。

Kikuchi 「あの野郎、来たら殺してやる」って言ってましたからね(笑)。

竹淵 埼玉の深谷で撮影したんですけど、駅まで迎えに行ったんです。会った瞬間Georgeさんクッシャクシャで、その状態で撮影現場に行ったらKikuchiさん本気でキレてて「ケツ出せ!」って言ってバチーンって。

Kikuchi 久しぶりに人を蹴りました(笑)。

George 全力の蹴りだったよね。痛かった……あれはもう二度と味わいたくない。

知久 やるほうもな。痛いんだよな。

Kikuchi (深くうなずく)

──Georgeさんがケツを、Kikuchiさんが胸を痛めた甲斐あって、いいPVだと思いますよ。UCARYさんのフロント張ってる人ならではの華みたいなものがよくわかります。

Kikuchi いいですよね。ほんと、すっごい華あると思います。

George こないだのライヴも華ありましたよ。

Kikuchi 本番になるとガラッと変わるんですよね。あれすげえなって思う。「あ、今スイッチ入ってる」って。

──そういうところは見てて学ぶこともあるのでは?

Hitomi ありますね。同じステージに上がる人として。すごいなーって思います。わたしたちにもわたしたちなりにあるんですけど、ヴォーカルの人ってやっぱりちょっと違うっていうか、見せ方をいちばんわかってると思う。

George 楽器持たないで立ってるのはきついっすよね。

Kikuchi 絶っっ対できない(笑)。何していいかわかんなくなって楽屋に戻っちゃいますね。

George だからピエール瀧さんとかすごいよね。

Kikuchi むしろ出てくると盛り上がっちゃうもんね。

George 2時間ステージにいるだけですもんね。

──Kikuchiさんちょっと似てませんか?

Kikuchi よく言われます。若いころの瀧さんに似てるって。

──いけるんじゃないですか? 富士山のかぶりものして出てきて。

Kikuchi いける……いや、でも1曲だな(笑)。

George ギターがいちばん要らない楽器だって言ってるから、その形が完成するね(笑)。


「Do It feat. UCARY & THE VALENTINE」MV

●インストと感じさせないインスト

──曲は従来だいたいGeorgeさんが中心になって作ってましたよね。今回はけっこうみんなで作った感じですか?

George 「Wannadie」は完全な共作ですね。俺とKikuchiと。作業の分担みたいのは前からけっこうあります。Kikuchiが持ってきた素材から膨らませたりとか。

Kikuchi 「Do It」のビートは自分が組みました。

George 器用なんですよ。

Kikuchi ひどいときはGeorgeんちに行って、こいつが作った枠組みを見て「ちょっといじるわ」って言ってやってたらGeorgeが寝てるみたいな(笑)。で、始発で帰って、Georgeが起きたらそれを確認してまた作業するっていう。

George 限界来ちゃうんで。「できたー!」と思って、でもまだいじんなきゃいけないとこがいっぱいあるんですけど、俺がやってもダメだなって思うとKikuchiに「ちょっとこれ見てくんない?」って言って「なんかある?」「あるかも」「じゃあやっといて」っつって、僕は後ろで聴いてるんですけど。

Kikuchi なんか音聞こえるなぁと思ったらイビキなんですよ。

George それを確認して……っていう作業の繰り返しでしたね。どれくらい家に来てたっけ。

Kikuchi 2週間ぐらいすげえしんどかったな。週3〜4回行ってました。

──「Wonder Boy」はSatoshiさんが作詞してますよね。苦労したそうですけど。

Kikuchi 曲ができてメロができてからは早かったっすね。

──他の曲はみんな作詞はシンガーがしてますもんね。

George 渋谷は自分のバンド(SUPER BEAVER)でもあんまり詞は書かないんですよ。

Kikuchi ほとんどはヤナギ(柳沢亮太)が書いてる。

──彼はバンドでもシンガーみたいなポジションなんですね。華ありますもんね。

Hitomi 存在感がすごいですよね。

──存在感といえばLEO今井もすごかった。

George 英語でノレるグルーヴと日本語でノレるグルーヴはまたちょっと違うんで、そういう意味でフリーキーな感じはありますけど、ハメるところはカチッとハメてきてましたね。逆に渋谷とか要司に作った曲はあんまりフリーキーな部分がないかも。

──曲の性質も関係あるんですね。

George 「Wannadie」はいちばんゆるいかもしれないですね、そういう意味で。自由にできる部分がかなり大きいっていうか。だからLEOさんにお願いしたのはハマったかもしれないです。

──YOCO ORGANもすごい個性でした。

George 金沢のグループなんですけど、活動も面白くて、向こうの地下アイドルと音源出したり、独特なことやってます。

──アルバムの評判はいかがですか?

George おかげさまでいい評価をいただいてます。あと単純にこの前のライヴにも初めてのお客さんがけっこういたんじゃないかなって気がしました。今まで来なかったような人たちっぽい感じもあって。

──対バンがフレンズでゲストがUCARYさんとなると女性シンガーファンみたいな人もいたかも。そういう人たちがMOP of HEADをどう聴いたか、興味ありますね。

George 意外に歌は馴染んだかなって思うんですけどね、セットリストの中に歌があっても違和感はなかったと思うんで。ただ、この前のライヴは出してきたアルバム全部からやったんで、必要な曲も見えてきたのが重要でした。もっとこういう曲があったほうがいいな、とか。

──僕は、このアルバムは……もうタイトルに思いが表れてますよね。

George 「頼むから」って感じですよね(笑)。

──MOP of HEADのキャリアのなかで重要なアルバムになると思ってます。例えばインストをやるにしてもフィードバックされるものは絶対にあると思うし。

George 作業のスピードが圧倒的に速くなりました。ノウハウがちょっとずつわかってきて、次に活かされるかなって。インストでインストと感じさせない曲ができれば最高ですね。

──歌がなくて物足りないって感じにならないってことですね。

George ならないインストができれば代表曲になるなって思うんですけど。

──まだ代表曲はできてない?

George 常に更新し続けたいです。来週からまた作り始めるんで。

知久 インストもやって、自分たちでも歌って、ひとにも歌ってもらって、となると、もうほら、何をやってもMOP of HEADだよって。思考や作れるものの幅が広がってるんで、あとはヒット曲をお願いしますよ!

George ほんとヒット曲が作りたいです。

Kikuchi そうだね。

(2016年8月12日)




MOP of HEAD

8月7日、渋谷チェルシーホテルで

 

[PROFILE]


MOP of HEAD

●もっぷ・おぶ・へっど……ブレイクビーツ、ダブステップ、ドラムンベース、ハウスなどのダンスミュージックをバンドで表現するべく2006年に結成。現在のメンバーは、左からTakuma Kikuchi(ギター)、George(キーボード/マシーン)、Satoshi Yamashita(ドラムス)、Hitomi Kuramochi(ベース)。2011年にCDデビュー、大型フェスに続々出演する一方で国内外の著名DJにもプレイされ、ロックとダンス両方のシーンで支持されている。昨年、所属事務所を移籍して2年ぶりの3rdアルバム『Vitalize』を発表。初めての全曲ヴォーカル入りミニアルバム『and Touch You』で、新しいバンド像を印象づける。 http://mopofhead.com

 

[RELEASE]

MOP of HEAD / and Touch You


MOP of HEAD『and Touch You』ジャケット

2016/07/20発売 / TRIGGER RECORDS

収録曲:[1] Do It feat. UCARY & THE VALENTINE [2] ALONE feat. 小林要司 (Large House Satisfaction) [3] Wannadie feat. LEO IMAI [4] You Gotta Fight feat. YOCO ORGAN [5] Wonder Boy feat. 渋谷龍太 (SUPER BEAVER)

結成10周年にして初の試み、全曲にゲストヴォーカルを迎えたミニアルバム。前作『Vitalize』でHitomiとSatoshiが歌声を披露→Creepy Nuts「爆ぜろ! feat. MOP of HEAD」でR-指定のラップと共演→ [3] の先行配信、という流れはあったものの、まさか全曲とは思わなかった。ダンスロックバンドとしての聴かせどころはもちろん随所にあるが、わかりやすくキャッチーに、と心がけて作った印象で、その意図はタイトルにこれ以上ないほど明快だ。インストでも十分にエモーショナルな彼らの演奏に、歌が入ったことでさらにメリハリがついた感じ。ゲストシンガーたちはいずれも歌唱力、個性ともインパクト十分で、いい仕事をしている。思い切ったトライアルなのは間違いない。これを踏まえて次はどこへ向かうのか楽しみだ。

 

[UPCOMING EVENT]

日時:10月23日(日)開場・開演 T.B.A.

会場:渋谷チェルシーホテル

共演:YOCO ORGAN / The Lazarus / Featuring Guest 渋谷龍太(SUPER BEAVER)

料金:前売 ¥2500 / 当日 ¥3000(1ドリンク代別途)

前売特典:「Wonder Boy 3104 & Takuma Kikuchi Remix」CDプレゼント

チケット:ぴあ/イープラス/ローソン/ライブポケット

お問い合わせ:渋谷チェルシーホテル 03-3770-1567


「Touch You vol. 2」告知動画

bottom of page